シュレディンガーの
んこ

このサイトの題名にもなっている、「シュレディンガーの猫」についてご説明します。

 シュレディンガーというのは人の名前です。1887年生まれのオーストリアの物理学者です。この方は1926年に波動関数という量子力学の基本の方程式を考え出した方なのですが、後年この量子論について不完全な部分を指摘したのが「シュレディンガーの猫」と呼ばれる思考実験です。

量子論

量子論とは、アインシュタインの一般相対性理論と並んで、現代の物理学の根幹を成す理論です。一般相対性理論は宇宙規模の問題を、そして量子論は素粒子レベルの問題を扱う物理学です。ただこの二つの科学は、水と油のように相容れない部分があります。それでも現代物理は、この異なった理論二つの上に成り立っているのです。

では量子とは、というと、物質の根幹を成す最小単位のことです。

物質は分子からできていて、分子は原子からできていてというのはかつて理科の授業で習ったことです。私くらいの年齢だと、陽子と中性子がくっついている原子核の周りを、電子がぶんぶん回っているというイメージで、かつては学んだ記憶があります。今では陽子や中性子もさらに細かいクォークと呼ばれる素粒子からできていることが解っています。
さて、素粒子は羅列するとたくさんの種類があるのですが、まさに量子論は、この素粒子を扱う学問なのです。

量子の性質

量子の一種である素粒子は、色々と私たちが日常で体感していることと違う振る舞いをしたり、なんでやねん、という部分を持っています。まず特徴的に上げられる最初のことが、素粒子は粒子でありながら波でもあるということです。
こう書いてもよく解りませんよね。そもそも波ってなんだい?と思います。実態があるのかな?動きの事じゃね?みたいに思います。
「粒子=もの」「波=状態」のように感じてしまうからだと思います。
ただここで言う粒子と波は、それ自体と言うより、それが本来持っている性質のことです。そう考えると、粒子であることの性質と、波の性質は、自ずと違うことが解ります。

二重スリット実験 by Wikipedia

二重スリット実験 by Wikipedia

素粒子が、この全く違ったふたつの性質を持つことを証明した有名な実験があり、「二重スリット実験」と呼ばれています。
壁に向かって素粒子(例えば電子とか光子)を一つ発射します。但し、壁の手前にスリットが二つ入った板を置きます。つまり、電子が粒であれば、そのどちらかのスリットを通って、その先の壁に痕跡を残すという予想が立ちます。ところが素粒子は、どちらかのスリットでは無く、両方のスリットを同時に通り抜けることが解ったのです。ほらほら、もうなんだか解らないでしょ。

しかも、複数の素粒子を打っていくと、壁には干渉縞という模様が現れます。これは、波の性質を表すものなのです。例えば水の上に石を投げると波紋ができますが、複数の石を投げるとその波紋がお互いに干渉し合って模様(波が重なる部分と重ならない部分)を作るのと似ています。

この素粒子の不思議な性質は、私たちが体感する物質の性質とは明らかに違います。

そもそも、最初に電子のことを「素粒子」と粒子と言っちゃってますし、一つと数えられるわけなので、電子は粒子です。
ところが、その振る舞いは、あたかも波のようであるということから、素粒子は、我々が目で見える物質とは、明らかに違った性質を見せるのです。

ふたつのスリットを、一つの粒子が同時に通り抜けるというのが既に魔法のようですが、ではそれは、その瞬間、どこにあるのか?ということになります。

シュレディンガーの猫

実はここで出てくるのがシュレディンガーの波動関数です。この関数は、量子力学の範疇にある素粒子が、どのくらいの確率でそこに存在するかを導き出す計算式です。つまり、この辺りに何%、この辺りに何%あるに違いないことが解るのです。ここにある!ということが正確に解るわけではなく、確率が分かるのです。
でも、見てみれば解りますよね?「あ、ここにあったのか」って。これを波動関数の収縮と言って、「人が見ると決まる」のです。
では見る前はどうなの?どちらかにあるでしょ、と普通はなりますし、「どちらかの箱にコインが入っています。さてどちら?」の場合は最初からどちらかに入っています。当たり前です。

ところが素粒子の場合、そうではないのです。

上に書いた実験の場合、他の条件を無視して単純にふたつのスリットを通り抜ける確率と考えると、箱のどちらにコインがと同じで50%の確率で右か左を通り抜けそうですが、実際に実験を行うと、両方通り抜けてしまうのです(素粒子が当たる壁に二つの痕跡が残ると言うことです)!1個が離れたスリットの両方ですよ!!なんだかキツネにつままれたようです。
これを量子論では「重ね合わせ」というのですが、実際に我々の見えている世界ではあり得ないこういった現象(性質)が量子の世界ではありうる、と言うことが理論から導き出され、実験でも確かめられているのです。

でも、何度もいいますが、変でしょ?絶対変だ!

で、自ら関数を導き出したシュレディンガーさんは、こんな思考実験を考えつきました。

ここで細かく実際通りに書くと解りにくいので簡略化します。

箱の中に猫がいます。箱の中は見えません。その中にある条件で青酸ガスを発生させる装置が入っています。とても動物愛護団体が嫌がりそうな装置です。
さてはこの中には放射性物質が入っていて、その物質からα(アルファ)粒子という素粒子が出たときにその青酸ガス発生装置のスイッチが入ります。つまり、粒子が出たら猫は死に、出なければ生きているという状況です。
1時間で粒子が出る確率は50%だった場合、1時間後に、猫は生きているのか死んでいるのか?という、頭の中の実験が「シュレディンガーの猫」です。

見れば判るというのは普通の回答ですが、見る前にどう考えるかを問うた問題なのです。
普通は、生きているか死んでいるかのどちらかで、それが見た後に判明すると考えます。その通りです。疑問の余地はありません。

ところが、量子力学は違います。「重ね合わせ」なのです。これは、スイッチを入れる粒子が発生している場合と発生していない場合の両方が、同時にそこにあるというのが粒子の性質だからです。つまり、ガスが発生している状態と、そうでない状態の両方が同時にそこにあるのです。

曰く、猫は半分生きてて、半分死んでんじゃね?それっておかしくね?

という疑問を、シュレディンガーさんは自ら提示したことになります。

さあではこれの解決は?となりますが、残念ながら、パーフェクトに解決されてはいません。
そもそも、この問題は、量子の振るまいが奇妙で、それをコペンハーゲンのニールス・ボーア研究所というところで出された「コペンハーゲン解釈」という、量子論の解釈に基づいています。この先にあるのは多元宇宙論だったりして、SF好きにはたまらない話題への入口なのです。

このなんだか手品の種明かしがされない、理論、理屈だけで成り立っているように見える現代物理の理論は、それ故嘘くさいですが、相対性理論もそうですが、これらの計算式が導き出す理論は、裏付けの実験や観測もあり、その理論を元にコンピュータなどがそもそも動いているので、嘘ではないでしょう。

結び

 ここでは、このサイトの名前の由来となった「シュレディンガーの猫」についてご説明しました。尤も、文化系の私が説明しているので、間違えがありましたら済みません。
 こういう場合に下手の横好きという表現は相応しくないかもしれませんが、そんなことで今後も、時折物理の話題やら、何かを書いていきます。
 量子論の最も好きな部分は、なんかいいかげんだと言うところです。世の中、きっちりしないといけないこともあるにはありますが、概ね、許容範囲は広いものの方が多い、というのが私の考え方です。このサイトは、そんな人間が運営しています。
 これを書いている今日、貴景勝が大関昇進を決め、栃ノ心がそこから陥落しました。優勝を飾った白鵬は、右手を痛めました。この世は糾える縄、その根幹は、この不可思議な素粒子の振る舞いが作り上げる世の中なのだろう、と思います。